セクションI.Aに述べたように、本調査の主眼は、既存の状態でのジェロントロジーと計画されるカブヤオ施設の拡張事業の価値評価にある。事前に合意されたように、ジェロントロジーの評価は純資産価値(Net Asset Value:NAV)及び割引キャッシュ・フロー(Discounted Cash Flow:DCF)法の二つの手法によりなされる。手法についてはセクションI.Cに詳述する。また、調査の結果は本レポートの第二章で述べる。
依頼条件のもとで、P&Aのジェロントロジーの企業価値を判定する作業、とりわけ評価の根拠となる会社の財務予測の作成にはセクションI.Dに示すように一定の制限がある点に留意する必要がある。P&Aは、今回の調査の提出期日以降に生じた事象や状況等には関知しない。
評価法
一般に、企業の本来的な価値はその資産ないし潜在的収益性により規定されると考えられる。このため、評価法は視線ベースまたは収益ベースで検討する形をとる。ただし、特定企業の価値推定において唯一の正解となるアプローチなど存在しない。価値推定をめぐる不確実性のため、単一の将来予測を確定的なものとして収斂し得ると見做すのは非現実的である。以上から、通常は特定企業の適正な価値をある程度の範囲内で見積もるために、手法ごとの結果を相互検証できるよう、一種類以上の方法による評価が行なわれる。
資産ベースの評価では企業の実現可能な価値の合計は、その資産から負債ならびに優先株を差し引いたものとして算出される。資産ベースの価値評価で最も一般的に用いられるのがNAVである。これに対し、収益ベースの手法では、企業価値の根拠を予想される収益やキャッシュ・インフローに求める、潜在的な投資家としての観点を用いる。この場合、企業価値の算定は現時点で予想される将来的な収益または将来的なキャッシュ・インフローの合計額を投資家が投入資本に対して期待できるリターン率で割り引く方法で行なわれる。本調査で採用した収益ベースの評価は、DCF法とも呼ばれる割引キャッシュ・フローを基準とする方法で行なった。
1. 純資産価値(NAV)法
前述のように、NAV法では企業の実現可能な価値の合計は、その資産から負債ならびに優先株を差し引いたものとして算出される。今回の調査において利用可能なジェロントロジーの最新の監査済貸借対照表(2005年12月31日付)を、会社のNAV法による評価の基準とした。
簿価は履歴的なコストに基づいており、必ずしも会社資産の現時点に置ける市場価値を反映してはいないため、本手法の導入にあたり、特定の貸借対照項目についてはしかるべき調整が必要となる。固定資産は通常、その評価価値へと変換され、一方で売掛金等のその他資産については、取得可能な額へと換算される。存在する場合には、偶発債務についても評価の対象となる。
2. 割引キャッシュ・フロー(DCF)法
DC法では、企業株式の価値を決定付ける重要な要因として、以下のものが挙げられる。
a. 余剰キャッシュ・フロー
全ての資本支出が所有者に配分され、適切な事業活動における支払の後に利用可能な金額を示す。したがって、キャッシュ・フローは事業の拡張及び/あるいは新規開拓のための資本資産への投資を含め、貸借対照表と損益計算書に影響を及ぼす一切の入出金を反映している必要がある。
b. 割引率
これは投資に対して投資家が求めるリターンの割合と等しくなる。割引率は基本もしくは投資資本の安全性、市況への敏感さ、そして投資家の収益目標に大きく作用する。割引率の選択は負債のコスト(既存のローンや債務に対して支払われる金利、プライムレート等の加重平均)から、市場で実施可能な投資に対する予測リターンまでの範囲で行なわれる
通常、割引率は予測期間中に対象企業が直面すると考えられるカントリー、マーケット及びビジネス・リスクを考慮して設定される。相対的にリスクの少ない投資は一般に国家の債権などとなる。政府以外の、一般企業その他に対する投資は、よりリスクを伴うものとされる。リスク・フリーな投資に対するリターンの基準となるのは、国債、金融債などの平均リターンである。カントリー、マーケットあるいはビジネス・リスクに応じ、通常はリスク・フリーのレートに対して割増が設定される。
c. 最終価値
評価調査においては、事業の存続期間が本質的に無期限である点が無視できない。事業活動によるキャッシュ・フローは予測期間の満了により終止するわけではないため、通常は予測期間末における終末価値が設定される。
この調査においては、ジェロントロジーの終末価値は残存純資産法により算出された。この方法では、予測期間の終わりに会社が保有する総資産を現金化し、債権者・株主に配分するとの仮定で計算する。
実現される金額は株主の持分の合計から予測期間末における現金残高を差し引き、予測期間のはじめにおける現金残高を加算した額に等しくなると推定される。期間末における現金残高を差し引くのは、この方法では各年度末の現金残高が全て配当として株主に配分されるとの前提に立つためである。終末価値は、現在の価値算定のための然るべき率で割引かれる。
制限事項
DCF評価法では会社による貸借対照、損益計算及びキャッシュ・フローの予測の使用が前提となる。上記、ならびにジェロントロジー首脳陣が提供した様々な情報をもとに、P&Aでは2006年から2011年までの各年度の12月31日を期末とする添附の予測貸借対照表を作成し、2011年12月31までの各年度について、損益計算、株主持分の変動及びキャッシュ・フローを予測した。予測財務諸表の作成は、ゲロントロジー首脳陣が行なっている(付録AのManagement
Representation Letter参照)。
添附の予測財務諸表と本レポートは会社における株式価値の範囲を推定することを唯一の目的としている。この資料は、潜在的な投資家との折衝の参考資料としての利用を前提としている。今回の評価作業にあたり、起点となる収支として、2005年12月31日付の監査済み貸借対照表(付録B参照)を用いており、これをもとに財務予測を行なった。
作成資料は経営を示す財務予測情報に限られ、予測のための根拠となる推定の信憑性や裏付けの評価は含まれていない。P&Aは予測に用いられた根拠やその他の情報について検討しておらず、したがって、付随する財務諸表や関連した推定について何らかの見解を述べ、あるいはいかなる保証をも行なう立場にない。
P&Aは調査の提出期日以降に生じたいかなる事象ないし状況についても、それに基づく調査内容の更新を行なう責任を負わない。事象や状況はしばしば予測どおりに生じないため、予測と実際の結果とのあいだには通常相違が生じることが多く、時として顕著な違いが発生する可能性がある点に留意する必要がある。
今回の調査はジェロントロジーの参考目的でのみ行なわれたものであり、P&Aの関知しないもしくは事前の承諾のない他の目的への流用、第三者への配布、または文献での引用や言及は意図されていない。P&Aは本レポートの意図された対象者以外への無許可の配布ないしその利用について、いかなる責任をも負わない。
本章では、ジェロントロジーの評価との関連でP&Aが実施した活動、評価手順の適用及び評価結果として算出された企業価値について述べる。
A. ジェロントロジーの評価作業
予測期間中の各年度における会社の貸借対照、損益計算及びキャッシュ・フロー予測
の作成
2.
NAV、DCF法により一定範囲でゲロントロジーの企業価値の評価。NAVでは2005年度の監査済み貸借対照表を基礎資料とし、DCFでは生成された財務諸表予測を基準に評価を実施した。
B. 評価手順
第一章で言及しているように、企業における価値範囲は数種類の方法で判定されるが、もっとも一般的に利用されるのは企業の資産及び潜在的収益性を基準とする方法となる。資産ベースの方法としてはNAVを、収益性による評価はDCFをそれぞれ用いた。収益性に基づく評価の前提として、P&Aではジェロントロジー首脳陣が提示した情報と推定をもとに、2006年12月31日から2011年12月31日までの5年間の各年度についてゲロントロジーの損益計算、貸借対照及びキャッシュ・フロー予測を作成した(付録C.1〜C.4参照)。
各評価法における評価のための要素の決定プロセス、ならびに評価調査の結果を以下に示す。
この手法では、会社の価値はその資産が市場で実現し得る総価値からその債務と優先株を差し引いて決定される。P&Aは2005年12月31日付の監査済み貸借対照表をジェロントロジー評価の基礎資料とし、NAV法で評価を行なった。勘定科目について、調整の必要性を判定するための検討を行なった。P&Aではとりわけ、会社の保有する不動産の最近の評価(過去3年間に該当情報は確認されていない)、損金処理及び偶発債務の有無を調査した。こうした分析の後、2005年12月31日付の監査済み貸借対照表については調整の必要は認められなかった。ただし、会社の債務にはジェロントロジーが株式への転換を計画している、2,590万フィリピン・ペソ相当の株主からの前受金が存在する。この点を考慮したジェロントロジーのNAV評価を下表II−1に示す。
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表II−1 ジェロントロジーのNAV法による評価結果 (フィリピン・ペソ単位) |
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項目 |
05年12月31日現在 |
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総資産 |
74,802,878 |
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減額:総負債 |
66,880,939 |
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株主持分 |
7,921,939 |
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調整: |
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優先株式 |
- |
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土地評価価格による調整 |
- |
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偶発負債 |
- |
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7,921,939 |
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加算: |
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普通株転換を予定された株主前受金 |
25,876,975 |
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総資産価値 |
33,798,914 |
NAV法による2005年12月31日付のジェロントロジーの企業価値は3,380万フィリピン・ペソ。
2.
割引キャッシュ・フロー(DCF)法
セクションI.シーでも説明しているように、DCF法による企業価値の推定では三つの重要な要素が存在する。本調査において、これらの判定は以下の方法で行なわれた。
a.
余剰キャッシュ・フロー
該当する余剰キャッシュ・フローは事業上のキャッシュ・フローであり、これは総所得にすべての現金外支出(減価償却等)を加算し、運用資産及び債務上の変動を加味して算出される。事業上のキャッシュ・フローを算出した後、予測期間内に会社が予定している資本支出を控除して余剰キャッシュ・フローが導かれた。ジェロントロジーの評価に用いた余剰キャッシュ・フローを付録Dに示す。
前述のように、割引率とは投資家が事業に資金を提供するにあたって求めるリターンの割合を意味する。一貫性を確保する必要上、割引率が税引き後のキャッシュ・フローに適用されている場合は税込みの額として提示される。割引率は基本もしくは投資された資本の安全性、市況への敏感さ、及び投資家の収益目標の達成度を基準に判定された。
本調査において、P&Aはフィリピン共和国のフィリピン・ペソ建て五年物国債(ROP 5-yr Peso Bonds)をリスク・フリー債権の基準として用いるのが適当と判断した。ROP 5-yr Peso Bonds現行の利率は7.136%であり、20%の税率を考慮すると、実質利率は5.709%である。
この利率は、現行のフィリピンの市場条件下で各種の投資を評価する投資家にとって、様々な投資先ないし金融商品の妥当性を判定する基準となる。
リスク・フリー率判定のため、リスク割増を適用した。一般に、リスク割増の範囲は3から5%とされており、P&Aではジェロントロジーの事業内容やその他の潜在的リスクを考慮の上で、ジェロントロジーに対して4%の割増を適用するのが相当と判断した。したがい、本調査における割引率は9.709%となる。
c.
最終価値
本調査では、ジェロントロジーの最終価値の判定に残存総資産法を使用した。
手法についてはセクションI.C.3に詳細を述べる。
以上に挙げた要素からジェロントロジー社のDCF価値は14,020万フィリピン・ペソと判定された。DCF評価の詳細は付録E及びFに示す。
C. 価値範囲
2種類の評価法に基づくジェロントロジーの企業価値を下表II−2に示す。
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表II−2 ジェロントロジーの企業価値範囲 (百万フィリピン・ペソ単位) |
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手法 |
企業価値 |
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総資産 |
33.8 |
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割引キャッシュ・フロー |
140.2 |
NAVは会社の総資産で実現可能な価値の市場換算額を示す。これに対してDCF法による評価では、会社首脳陣が予測する、今後6年間の事業上の潜在的収益性が明らかにされている。以上の方法により、ジェロントロジーの企業価値の範囲は3,380万〜14,020万フィリピン・ペソと結論付けられる。